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ハーレムラブコメの決着の付けかた

  • ひろすえ
  • 2019年11月1日
  • 読了時間: 6分

僕たちはハーレムラブコメが好きです。


ただ一人の男性である主人公が、いろんなタイプの美少女に何故が好意を抱かれて、他に恋敵になる邪魔な男は存在せず、全員が主人公を取り合う。 そんな身勝手な妄想を表現したハーレムラブコメは、いつだって僕たちモテない男子を慰めてくれました。


思春期真っ盛りな僕らは、「こんなこと有り得るわけないだろ」と強がりながらも、無茶苦茶な設定のフィクションの世界から目が離せずにいました。



今回私が見た「冴えない彼女の育てかた fine」も、そんなハーレムラブコメな世界観のアニメ映画です。

「冴えない彼女の育てかた」は、ライトノベル原作のアニメシリーズです。 アニメが2クールあり、今回の映画に続きます。


日々オタク活動に勤しむ主人公・安芸倫也が、桜舞う坂道で偶然見かけた美少女に目を奪われ、彼女をメインヒロインのモデルにした同人ゲームの開発を思いつきます。 ゲーム制作に携わるのは、同じ学校に通いながら、それぞれイラストと文章の世界で名を馳せる2人の美少女、澤村・スペンサー・英梨々と霞ヶ丘 詩羽。 ここに、主人公の従姉妹で音楽が得意な美少女・氷堂 美智留と、主人公を小学生の頃から慕う年下の美少女・波島 出海が登場し、更に、発端となったメインヒロインのモデルが、実は同級生の美少女・加藤 恵だったことが判明します。

しかも、こうやって登場したヒロインたちは、全員何かしらの理由で主人公に好意があり、いろんな大義名分のもと、とにかくイチャイチャするのです。

僕は、アニメを見ながら「こんなこと有り得るわけないだろ」と何度も思いました。

何より腹立たしかったのは、主人公の態度です。 どの美女からどんなアプローチを受けても、最後は冗談に付し、一方的に好意を受け続けます。 彼が好意を返すことはありません。 この学ランクソ眼鏡は、分かっていてやってるのです。 全員の態度にドギマギして、全員の気持ちに結論を出さず、いたずらに関係を先延ばしにします。 思わせぶりな態度でワンチャンあるかもと期待させて飯を奢らせ続けるクソヤリマン女とやってること同じだぞブチ殺すぞ!!!!


参考:「クソヤリマン女」で検索して最初に出てきた画像


それでもアニメシリーズは、綺麗な作画と、コミカルで軽快な会話劇が小気味よく、ついつい続きをみてしまいます。 (いまならアマゾンプライムで2期「冴えない彼女の育て方♭」が視聴できます。)

そうやって豊ケ崎学園のみんなと同じ時間を過ごす中で、だんだんと私は気づいていきました。わたしはこれまで、ハーレムラブコメアニメの見方を間違えていたのです。 (豊ケ崎学園は、主人公たちが通う高校の名前です。)


僕がやっていたのは「back to the future」のデロリアンに対して、「そんな車あるわけないだろ」と言っていたようなものなのです。 アンパンマンを見ながら、頭がパンの人間がいるわけないだろと怒り狂ってる大人を、世間一般的に何というでしょう。

ハーレムラブコメは、有り得るとかあり得ないじゃないのです。 僕たち視聴者が、それを受け入れられるかどうかなのです。 つまらない現実の制約を取っ払って、ハーレムラブコメの世界を心から楽しめる人間だけが、レティクル座行きの列車に乗れるのです。 まぼろしでも夢でもいいじゃない!

しかし、そうやって腹を括ったのもつかの間、アニメは2クール目にして急展開を見せます。

僕たちがようやく現実を脱却したころ、物語は急に現実味を帯びだします。 友情、実力差、市場の原理、仲間意識、外の世界、嫉妬、罪の意識、別れ。

僕は、2クール目の最後に主人公が選んだ行動に、これまでご都合主義で無根拠にモテ続けていたと思っていた主人公が、どうして彼女らにこんなに愛されていたのか、その理由が分かったような気がしました。 こいつなら、全員にモテていても納得できてしまう。 ハーレムラブコメの辻褄が合ったのです。(おそらく世界で初めてのことです。)

映画は、そんなふうに辻褄があったハーレムラブコメのその先を描きます。

見る前に分かっていたのは、この映画で、一連のハーレムラブコメ作品が完結するということだけでした。


その上で僕たちは、この映画に何を望んでいたでしょうか。 私はこのハーレムラブコメが、この世界が、終わらないでくれと心のどこかで思っていたかもしれません。

なぜなら、主人公・安芸倫也がヒロイン加藤恵と恋人になることを応援している反面で、えりりが、霞ヶ丘先輩が、出海ちゃんが、みちるが、俺の知らない誰か別の男と付き合わないでくれと、私は確かに思っていたのです。

全員に言い寄られて、ちやほやされて、結論を出さずに今日を心地よく生きていたかった。 最初に私が嫌悪していた主人公像は、実は私自身の願望であったのだと、今になればよくわかります。

優柔不断で誰も選べないまま、大学生になっても、大人になっても全員とイチャイチャし続ける。 たとえフィクションの世界でも、きっとそんな設定は成り立たないのです。 (それはもう「東京大学物語」です。)


ハーレムラブコメは、生まれたその時から瓦解する宿命なのです。

今回の映画は、ハーレムラブコメが終わっていく様を見事に描いていました。 ハーレムラブコメの終わりとはつまり、魅力的な彼女たちの中から、誰か一人を選ぶことです。


映画では、メインヒロインとの「もうやめてくれ」と思うくらいのキモくて恥ずかしいイチャイチャが描かれます。 私は友人たち数名でこの映画を見に行きましたが、会社の同僚とピンク映画を見に行ったときよりも恥ずかしかったです。

特に中盤、二人が手を繋ぐシーンがあるのですが、あんなにエッチな手繋ぎを私は見たことがありません。 ほぼポルノです。

ですが、この顔が熱くなるイチャイチャのひとつひとつが、彼女を選んだ理由であり、彼女以外を選ばなかった理由なのです。 それを、クソ学ラン眼鏡クソキモ主人公が、身体を張って示してくれたのだと私は解釈しました。

何であれ、与えられた選択肢からひとつを選ぶには、理由や責任が生じます。 ハーレムラブコメの世界で、これまで無条件に承認され、愛を受け続けていた主人公にとっては、普通の人間関係よりも何十倍の理由や責任がのしかかるのでしょう。

魅力的な美少女の数が増えれば増えるほど、選ばれなかった彼女たちの、悲しい物語が紡がれていくのです。 ハーレムラブコメのもつ、残酷な側面を垣間見ました。

それでも終盤、坂道を登りながら互いを鼓舞する、選ばれなかった彼女たちの力強さに感動させられたことも事実です。

この作品は、ハーレムラブコメでありつつ、学園青春映画でもあり、ポルノ映画でもありました。

そして何より、ハーレムラブコメに対して、きちんと最後まで責任を取ろうとしてくれた映画だと思いました。

エンドロール後の演出については、映画後の飲み会で激論が交わされましたが、思いの外お酒が盛り上がり、泥酔してお互いを褒めちぎり合うノリが始まってしまったので、結論はでませんでした。

以上です。


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blessing softwareのメンバーが勢揃い! アニメのあの曲や、映画のあの曲も!?



これまでも、これからも。blessing softwareはなくならない。

日時:2019/11/17(日) 18:00~18:30 場所:新宿 WildSideTokyo イベント:反逆のメイプル R2 Vol.105 前売り ¥1,000 / 当日 ¥1,500 バンド名:冴えない彼女??の育て方 fine ジャンル:ハーレムラブコメ チケットのお問い合わせは @hiroshue まで

ご来場お待ちしております!!!!

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